この積分、結果は明瞭で覚えやすい表現ですが、この結果を導き出す過程で結構分かり難い手法があり ます。 今回、この積分を導き出すに当たっての考え方を自分なりにまとめています。 計算に当たっては、私の手元には一松信の解析学序説と寺澤寛の数学概論がありますが、今回は一松の 考え方を参照しつつ、寺澤の展開式を使います。 任意の実数、に対して
この式は、tの位置で連続であれば、
となります。更には、
の様に連続関数的表現の関数(超関数)に置き換えることにより、
あるいは、
となり、所謂超関数の典型的な公式を得ることができます。 このように出来る訳は、の函数形に依っており、下記特性を持っているからです。
下記に、の値によって、がどのように形上を変化していくのかの外観図を示します。この図で分かるようにの増大と共にの鋭いピークがで立ち上がり、では、は限りなくに近づいていくことが分かります。
そこで、まず計算に当たり、函数を以下のように規定します。
①は、ある実数 に対し変域で定義され、有界とする。
②は、内で不連続であっても良い。
③は、内で多くの極大値、極小値をとっても良いが、極値の回数は有限個であるとする。(極値の個数が∞個あると、連続区間の個数も∞個となり、特定点を始点、終点とした連続区間内の積分が出来ないので本表題の趣旨に合わない。)
④は、内の任意の隣り合う不連続点間、と直近の不連続点間、と直近の不連続点間の更に小さな小変域に分割した時、それらの小変域内でのは常に単調(増加又は減少)であるとする。(積分の第二平均値の定理が使える条件、且つ、ここで使う函数の収束性に必要)
以上の事を「函数は変域に於いてディリクレットの条件を満足する」と言います。
そこで、これからやろうとすることは、変域を下の図のように3つの場合に分けて積分結果を見ることです。 つまり、軸上の原点0を中心として、case1: がを含むのか、それとも、cas2: より大きい位置にある のか、逆に、case3: より小さい位置にあるのかで積分値がどのようにかわるかを見るものです。
この為のもっとも単純な方法として実数を取り、case R: の時と, case L: の時の積分計算を行 い、後で上掲の3ケースの積分を求めるものです。
そこで、第一ステップとして、函数が、変域 内で単調であるとし、
を考えます。ここでは、 のの内、0から直近の点までをの連続した区間として考察対象としています。つまり、区間は、の不連続点は無しとしていますが、にての不連続点はあっても良いのです。函数は、変域内で単調なのでは、確定値を持ちます。尚、ここでとせずに、としている訳は、がにて不連続点を持つ場合を考慮して、を限りなく小さく言ってった時にその下極限界値としての位置に の値が確定値としてあるという意味です。即ち、を任意に小さく取れば、に対してを満たす が存在します。そこで、なるを取ることにすれば、が成立し、且つは、自動的に満たされます。 ここでは、次の積分を、がこのの制限範囲内内か、それともその外側かで、二つの 区間に分けて計算します。この様に計算する訳はの時に、となる為、の積分区間内で、即ちの有限区間は、の時、積分値となり、意味を持たないから、の値に応じてとして行った時にがに関わる有限な積分値を持つかどうかを調べる為です。
そして、この2つに分けた積分を、更に積分の第二平均値の定理を使って分解します。 今やろうとしているのは、 の時に、 の減少と共に、小さく消えてしまう 積分を除去して計算対象外として無視する方法です。ここで、被積分函数の内、は、内で連続関数であり、積分可能です。の函数形状が良く分かっており、その積分値も計算できるため、上掲の積分の中からを外に出し、の積分値を評価することで、を求めようとするものです。そしてこのために積分の第二平均値の定理(補題1)を利用します。即ち、と置けば、
(1)
(2)
但し、
● (2)の第4右辺、第1式の の部分の積分考察
ここで、下記に注意します。
は、任意のをとる毎にその最大値が決まります。従って任意の十分小さなに対するに対し、は、さえ満たせば、を満たすは任意に取れる。そして、そのような条件での値を決めると、を十分大きな値にすることにより、は十分大きな値と取ることができて、にとすることにより、とすることができる。同様には、なのでにとすることにより、とすることができます。
この時、絶対値|**|内の各積分は、確定値を持ちますので、即ち、
となります(補題2)。それ故、を十分に大きく取ると、ある十分に大きな値が存在し、に対して、ととが極めて近い値と取る為に、
とできます(補題3)。
● (2)の第4右辺、第2式の の部分の積分考察
同じ考え方で、値を決めると、を十分大きな値にすることにより、は十分大きな値と取ることができてにより、とできたので、により、にとすれば、とすることができます。
この時、絶対値|**|内の各積分は、上掲と同様確定値を持ちます。それ故、を十分に大きく取ると、ここでも又、ある十分に大きな値が存在し、に対して、ととが極めて近い値と取る為に、
とできることになります。
● (1)の第4右辺、 の部分の積分考察
所がこの積分の第3右辺の第一式と第二式は、(2)で見られた積分の様に、必ずしも互いに打ち消しあうとすることは出来ません。
上掲の積分で、は、任意に小さなに対して、その収束性から必ず存在する正の数に対し、ならばを満たすものでしたので、を満たすを取ることにより、を満たすものでした。ここでも又、に対するは無数にあります。やはり又、任意のをとる毎にの最大値が決まります。するとこのに対し、なるを一つ決めれば、その値に対して常にが満たしますが、且つ確定した値でもあるので、の時、となります。それ故、上述の(2)の計算と同様、
となりますので、を十分に大きな値を取れば、即ち、ある十分大きなを取るととすることが出来て、これに対し、ある決まった数値が存在し、常に
とできます。しかるには、なので、積分の第二平均値の定理によっての値に応じて決まるとしても、の函数特性に強く依存している為、の函数形が何も決まって居ない状況の下では、を十分に小さく取った時に、は、に対して、必ずしもとはならずにある有限値を超えられない場合も想定しておく必要があります。例えば、の具体的な函数形は兎も角、、etc.なども考えられます。それ故、、が、に対して、となる場合には、(1)の第4右辺の絶対値を取れば、十分大きなの値に対して、εより小さくなると言えますが、そうでない場合は、別途考察が必要です。
そこで、の函数図形のパターンを見ることにします。
すると、区間では、、区間では、(但し、)となっており、しかもその減衰形状パターンから区間の積分値を、区間のそれを、、即ち、
と書くことにすると、常に、、且つとなっています。それ故、は、の増加と共に、その値を小さくしながら常に成立しています。
そこで、と置いて、
と置きます。すると、上掲の理由、即ち、、且つにより、cがt軸上のどの位置にあっても、が成立し、且つの様に一定値に収束しますので、が発散することはありません。
実際には、
又は、
(但し、)となります。これら2つの式で右辺の()内の積分値は、前者は、必ず後者に差し引かれますが、によって常に正値となります。そして又、の右側の式も同じ考え方で、正値となります。それ故、つまり、が軸上のどの位置にあっても、正値を取ります。
所が、これを見方を変えて、
所が、これを見方を変えて、
と書き直すと、今度は、上掲二つの式のの右辺の中の式は、前者は、必ず後者が加わりますが、である為、常に負となります。そして又、の右側の式も同じ考え方で、負値となります。即ち、上式の2つのは、第一式以外の積分値の項全ての足し合わせは負値となります。即ち且つ、となりますので、の最大値はの時の値、 となります。
それ故、十分大きなに対し、ある十分大きな数値を取ることが出来て、と出来ますが、が十分大きな値とならなとしても、の大きさは、と出来ますので、
となります。尚、ここで、をと変えても問題ありません。ですので。
以上から、任意の十分小さなを取ると、この値に対し、適当なを満たす、を取り、且つを十分大きく取ることにより、に共通な十分大きな値で、を満たすが存在し、且つ、ならば、
及び
が成立しますので、
それ故、下記となります。
これから
且つ、
次に第二ステップとして、に対し、下記積分を求めます。ここでは、case1のの内、から直近の迄をの連続した区間として考察対象としています。
但し、は、で単調で、且つ(確定値)とします。すると任意に小さな値に対し、が存在し、ならばと出来ます。そこで、なるを取ることにすれば、が成立し、且つは、自動的に満たされます。ここでは、次の積分を、がこのの制限範囲内内か、それともその外側かで、二つの 区間に分けて計算します。
既に上掲で述べたことと同様に、以下の様に積分の第二平均値定理を使って分割します。
(3)
(4)
これから区間での積分と同じ手法により、任意の十分小さなを取ると、この値に対し、適当なを満たすを取り、且つを十分大きく取ることにより、を満たすが存在し、且つ、ならば、
及び
が成立しますので、
それ故、前掲と同様に
これから
且つ
次に第三ステップとして、 又は の時の区間における積分を求めます。するとの時、
第四ステップ まとめ
以上により、ディリクレ積分は次のようになります。
(1)
(2)
(3)
(4)
尚、前述の積分区間、及びと、上述の積分区間との関係は例の次の通りです。
更にがで連続であるとしてであるとし、
と約束し、且つ
と定義すれば、に対して、下記が成立する。
つまり、Diracが持ち込んだ連続関数の積分中に、形式的な離散的代数計算を行わしめるようにする関数、即ちδ関数を上のように約束することにより、関する連続関数と組み合わせて無理なく代数計算的結果を得ることができることが分かりました。
ここで、
ここまでの説明で、いくつかの点で説明しておいた方が良いと思われる箇所は、別途項を改めて説明を予定しています。